story

運命の相手を探す1人の女性、希実

希実はこの日、自分のことを『黄身』の発音で呼ぶ男に別れを告げる。

そんな希実の前に現れたのは高架下で暮らす1人の老女。

テントとダンボールで作られた家を「都」と言う彼女は、

運命に囚われた希実を大胆に笑い飛ばす。

そんな老女と話すうちに、希実の中で運命というものが形を変えていく。

時を待つように止んだ翠雨。

希実は始発の電車に過去の思いを流す。

運命探しをやめて軌跡を育もうと、また新たな足跡を残していく。

そんな彼女の前に現れる1人の青年。

彼女の新しい世界がまたひとつ開く。

希実の人生の、ちょっとした隠し味。

そんな出会いと別れを果たす、ある一夜のはなし。




交差する人生。あなたはその出会いを運命だと思いますか?


どこにでも人生という点は転がっていて、線を伸ばしている。

そしてごくたまに交わり合う。

海辺を歩く彼女だけでなく、高架下を都と呼ぶ老女にも人生があり、

偶然出会った二人の交点から

彼女たちはまた新たな方向に線を伸ばしていく。


そんな些細な一夜が、誰かの岐路になってほしい。